顎関節症とマウスピース治療

顎関節症で歯科医院にかかった場合、通常、保険適用できる唯一の治療法であるマウスピース治療を受けるのが一般的です。自費診療でもよければ院の方針にもとづいた顎関節症の痛みに対するいくつかの治療オプションがあります。専門院で高度にカスタマイズされたアプローチで障害に対処することができます。顎関節症を多く扱っている歯科医院では痛みの根本的な原因を理解しようと心がけており、あなたのためだけの治療計画を立てるよう努めています。マウスピースが最適だと院長が判断した場合は、カスタムフィットのマウスピースを処方してくれます。

目次

マウスピースとは?

マウスピースは、TMJアプライアンス、マウスガード、ナイトガード、バイトガード、安定化スプリントなど、さまざまな呼称で知られています。多くのマウスピースは、環境ホルモン問題を引き起こす可能性がある化学物質、BPA(ビスフェノールA)を含まないアクリル樹脂で作られており、様々な方法や目的に合わせて設計されています。下の歯にのみ使用されるものもあれば、上の歯にのみ使用されるものもあります。または上下両方に使用するものもあります。単に歯ぎしりを物理的に防ぐために使用する場合もあれば、歯列を整えるために使用される場合もあります。

TMJ(Temporomandibular Joint)…顎関節。直訳すると「側頭・下顎 関節」で、文字通り側頭骨と下顎骨をつなぐ関節。

通販のマウスピースでいいの?

オンラインまたは店舗でマウスピースを目にすることがあるかもしれませんが、これらの市販のマウスピースは資格のある歯科医によって設計されたものほど効果的ではありません。場合によっては歯や顎関節の状態を悪化させるかもしれません。カスタマイズできるとうたった(湯せんで温めて型を合わせる)ボイル・アンド・バイト・マウスガードでさえ、材料がそれほど効果的とはいえず、歯科医が装着したマウスガードと同じ機能を果たすことはできません。

熟練した顎関節専門の歯科医師の場合は、特定の解剖学的構造、咬合、顎の位置、咀嚼筋リラックス、および歯の形状を考慮してマウスガードを作成します。また、TMJアプライアンスが意図したとおりに機能し続けることを確認するために、定期的に検査してフォローアップします。例えば、私が懇意にしている歯科医師の先生は色を付けたマウスピースを用います。色がはがれた部分から歯ぎしりによって削れた跡を判別し、ルーターで不要な部分を削りながら、マウスピースを患者さんの咬合に少しずつ合わせていきます。

場合によっては、顎関節専門の歯科医師が柔道整復師またはカイロプラクターと協力して、最善の治療方針を決定することがあります。私もその一人です。

TMJアプライアンスの種類

マウスガードのデザインに関しては、いくつかの異なるオプションがあります。これらには以下が含まれます。

安定化スプリント

最も単純なタイプのTMJアプライアンスであり、一般歯科医がよく使用するタイプの安定化スプリントは、睡眠中の歯ぎしりから保護するために歯を覆います。歯の損傷からの保護には有効ですが、場合によっては、アゴの痛みを悪化させる可能性があります。

再配列(Repositioning)スプリント

圧力を和らげるために下顎の位置を変える副子の役割をします。アゴの解剖学的構造に応じて、前方または後方に再配列します。咬合を変える可能性があるため、綿密な経過観察が必要です。

侵害受容性三叉神経抑制張力抑制システム(NTI-tss)

1998年にFDAによって承認された比較的新しいソリューションであるNTI-tssは、三叉神経の抑制反射をトリガーすることによって機能します。顎の筋肉が自然に弛緩し、痛みが緩和されるとのことです。前歯2本にのみ着用します。NTIのいくつかの懸念は、奥歯がサポートされておらず、前歯だけが接触していることです。前歯だけが触れると、こめかみの筋肉がスパズム(筋痙攣/筋緊張)を起こし、こめかみの緊張型頭痛を引き起こす可能性があります。

あなたに合うTMJマウスガードは?

どのタイプのマウスガードがあなたに最適であるかを決定する際の重要な要素は、顎関節の痛みが歯ぎしりや顎の食いしばりによって引き起こされているかどうか、または他の要因が働いているかどうかを判断することです。言い換えれば、歯ぎしりを単に防ぐスプリントが必要かどうか?あるいは、顎関節の負担を軽減することにより、歯ぎしりを防ぎ、顎の筋肉と関節を保護するソリューションが必要か?判断する必要があります。睡眠中のいびきや顎の位置を考慮することも、筋肉や呼吸、マウスガードのタイプにとっても重要です。アゴの位置や痛みが睡眠時無呼吸症候群やいびきから生じていることもあります。その場合、気道と呼吸のためのアゴの位置をサポートするTMJマウスガードを設計することが重要です。

歯科医師によっては、特定ブランドのTMJアプライアンスを推奨しがちですが、実際には重要なのは特定のメーカーだというわけではありません。重要なのは、歯科医師が患者さんのアゴや体に適した治療を理解し経験を積んでいるかどうかです。患者によって異なる、様々な咬合や痛みの種類・度合いなどによって、治療の要件は全て異なります。一つの治療法に固執しないことが重要です。優れた歯科医師なら、正しい検査や最新機器によって筋肉と咬合を測定し、あなたがリラックスして無理なく噛める正しい歯の位置を整える方法を熟知しています。

引用元
https://www.tmjplus.com/tmj-mouthguards-what-you-should-know/

編集者注:この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的アドバイスではありません。頭痛が持続し消えない場合は医師にご相談ください。

監修・まとめ
藤原 邦康
カイロプラクティック・オフィス オレア成城 院長
米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック
一般社団法人日本整顎協会 理事

1970年静岡県浜松市生まれ
カリフォルニア州立大学卒業

カリフォルニア州立大学(映画専攻)卒業後、CG映像の制作に携わった後、米国ライフウェスト・カイロプラクティック大学へ転進。2004年 米国ライフウェスト・カイロプラクティック・カレッジ卒業2006年 カイロプラクティック・オフィス「オレア成城」開院。2016年日本整顎協会設立。
顎関節症に苦しむアゴ難民の救済活動に尽力。噛み合わせと瞬発力の観点からJリーガーや五輪選手などプロアスリートのコンディショニングを行なっている。格闘家や芸能人のクライアントも多数。

【メディア取材】
「あさイチ」(NHK)、「とくダネ!」(フジテレビ)、「Tarzan」(マガジンハウス)連載、「BIGtomorrow」(青春出版社)、「長目飛耳」 (日経BP)、「からだにいいこと」(祥伝社)、「日刊SPA!」( 扶桑社)、「世田谷の頼れるドクター 信頼できるお医者さんに出会える本」(田園都市ドットコム)「セラピスト」( BAB出版社)「仕事&資格を手に入れる本」(リクルート)、「おはスタ」(テレビ東京)ほか

【執筆】
サライ(小学館)
「自分で治す!顎関節症」(洋泉社)Amazonベストセラー1位
「体の理を生かすカイロプラクティック」(科学新聞社)

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